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2018年11月号(617号) だれもが健康に生きたい
2018-11-01
 
2018年11月号(617号)
 
だれもが健康に生きたい
 
  ~過剰なカロリーとの闘い~
 
        学園長 吉野 恭治
 
 
 30年ばかりの昔、50歳に手の届こうとする頃だった。私は異常な倦怠感に襲われ、診察を受けた。即刻入院という指示で、糖尿病だった。原因は体質遺伝、過食、心的ストレスなどであろうといわれた。病院の理事長も主治医も教え子の父親であることがいくらかの救いだった。一夜のうちに環境は激変した。
 入院すると直ちに過食、エネルギーの過剰摂取の防止が挙げられた。私はもともと過食というほどの大食漢ではなかったが、言い渡された1日の摂取エネルギーは、1600キロカロリーまでの制限だった。
 先日発表された「厚労省の国民の健康と栄養調査」の結果によると、40歳代で男性は1日2153キロカロリー、女性では1704キロカロリーが標準である。当時私は平均から1日500キロカロリーを減らさねばならなかった。女性であれば制限量とほぼ同じである。(図表①)その頃体重は70キロに届こうかという状態で、現在のように50キロを切った状況では比べるべくもないが、肥満している人の割合は、現在なら(図表②)をご覧いただきたい。日本人男性は40歳代で35、3%、3人に一人は肥満であり、糖尿病予備軍である。ところが同世代の女性は17・4%で男性の半分である。テレビCMで女性の肥満対策のサプリメントがたくさんあるが、意外と肥満者は少ない。(図表③)の「糖尿病が強く疑われるもの」では40歳代は8.1%、女性は3.1%、しかし男性は70歳代で25.7%にもなり、3倍になる。女性も19.8%にもなり、6倍に急増する。ただいずれにしても高齢者となる前の対策が必要であることはよくわかる。また糖尿病発病の割合が、男性が極めて高く、女性は低いのは遺伝の因果関係か、酒とたばこの生活習慣によるものかわからない。ところで肥満と予想される人や糖尿病予備軍の人に参考のための食事計画をお伝えしたい。
 糖尿病の予防にとり組むには、あらゆる食品を単位で知り分けることが必要で、日々の訓練で大体つかめるようになる。食品単位表では1単位を80キロカロリーと定めている。糖尿病の人は症状の重い人は1日15単位から、重症でなければ20単位くらいとなる。健康な一般成人だと25単位から28単位くらいになる。ちなみにご飯は茶碗に軽く1杯で2単位、少量のご飯でも1日3回で6単位になる。パンは4枚切りのトーストで、バターやジャムを塗ると1回が2単位を軽く超える。野菜だと1日1単位でかなりの量になるので、健康対策にはいいが、カボチャやジャガイモは要注意。私は4回ばかりの入院経験で、どの折も1日1本の牛乳を取り入れられた。牛乳瓶で1本は2単位を超える。それでも栄養補給には最高の効果を持つと知った。
 参考までにお伝えしておきたいが、脂系のものは全体に高カロリーである。仮にカツ丼を注文すれば、12単位に近い。カツカレーも同様である。もしカツカレーにスープ程度の添え物と福神漬けを用意すれば、これだけで13単位近くになる。糖尿病の治療中にはあと2食で7単位程度しか残らない。牛乳の2単位で残り5単位。ほとんど空腹は満たされない。食事制限のつらさや厳しさをよく理解してほしい。
 今回の「国民健康調査」で日本人男性の平均寿命は約81.1歳で世界3位、女性は約87.3歳で世界2位、世界的に見れば、男女とも長命である。しかし女性が男性より平均6歳も長命である理由は、女性ホルモンの関係とか、家庭労働における適量の運動を挙げる人がいる。しかし今回の調査を見ていて思う。ここに掲載していないが、20歳以上の女性は男性より最高血圧は10以上低い。食塩の摂取量(図表④)は男性が1日10.8g、女性は9.1gで、女性がかなり低い。ついでながら喫煙者の調査(図表⑥)を見ていただきたい。男性では20代では26.6%ですでに4人に1人になっている。しかし今回の調査でも30代、40代の男性は40%に近い。ところが女性の喫煙者は平均でも7.2%、最も多い40代でも12.3%、70歳以上だと2.9%である。これらの事象を比べてみると、女性が長命である理由がよくわかる気がする。(図表⑤)で男性が60歳代から運動習慣を持つものが多い。しかしこれは会社勤めが終わって手持無沙汰な時間を利用できるからではないか。
 
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