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新! 学校報「泉」 アーカイブ

若葉学習会学校報「泉」 第673号 (2023年7月号) もくもくキャンプ場にて  佐布 明道

今月の短歌


セミの声ミンミンミンと聞こえれば
 夏が来たかと楽しくなるね

米子校舎 小学4年 
    松本 琉花



君たち 僕たち① 
米子校舎 中学3年
  妹澤 龍さん





 六月三日、若葉の中学三年生が模擬試験と戦っている日、妹澤君は別の場所で戦っていました。妹澤君は鳥取セリオFCというフットボールクラブチームに所属しています。この日は県中部で第29回全日本U15フットサル鳥取県大会が行われていました。
 予選リーグから、大接戦の末にPKで勝ち上がった準決勝まで三試合を戦い抜き、チームは疲労困憊でした。その中で迎えた決勝戦。一対一の同点で緊迫した時間が続きます。そんな膠着状態を破って、試合を決定づけたのは妹澤君の勝ち越しシュートでした。さらに彼がダメ押しのゴールを決め、三対一でチームは見事優勝しました。
 もちろん受験生として、勉強も疎かにはしません。ちゃんと次の日には追試を受けに来ました。米子東、県外のサッカー強豪校も含め、今は進路を検討中です。どこに進むにしても「将来は人を助けるような仕事がしたい」と言います。彼のシュートがチームを救ったように、これからも誰かの助けになれるといいですね。
 (担当 新庄)
君たち 僕たち② 
イズム大学受験科
石原 晴花さん


 今年度の大学受験科は男子より女子が多く、理系の生徒だけを比べても女子の方が多くなっています。「リケジョ」という言葉がメディアに登場したのは2010年頃ですが、最近あまり聞かれなくなった気がするのは、女子が理系選択をすることが特殊なことではなくなってきたからかも知れません。今回紹介する石原晴花さんも、将来は医療系の進学を目指している理系の女子の一人です。
 彼女の趣味は「友人とおしゃべりをすること」だそうです。このことが示すように、彼女は人と交流を大切に考えています。高校では弦楽部に所属し、バイオリンを担当していましたが、その入部の動機が、中学時代に仲の良かった友人と約束していたからだそうです。そんな彼女の将来やりたい事の一つは、全国の方言を覚えて、いろんな人との距離を近づけていくことだそうです。彼女が目指している医療系の進路を実現するには、もちろん専門的な知識も必要ですが、それ以上に、こういう「人間が好き」という適性は不可欠だと思います。
(担当 河田)

卒業生はいま 







検事
  國永 大二郎 さん

 
 全国にわずか二人しかいない鳥取県出身の検事のひとりであり、全人類の上位2%のIQの持ち主だけで構成される国際グループ「メンサ」の会員でもある國永くん。このスーパーエリートはどんな少年だったのでしょう?
 実は…厄介な中学生でした。国語の授業で感想文を書かせると、物語の美点には触れず、矛盾点を指摘するだけの作文を書くのです。私は何度か「そんなものの見方ばかりしていると豊かな人生は遠のくよ」と彼に話しました。  
 やがて彼はユニークながらも素直な青年に成長しました。米子東高を経て法学部の名門中央大学に進学し、成人式に向けて書いた作文が最優秀賞を受賞し成人代表として壇上に立ちました。その後、慶應義塾大学法科大学院を経て司法試験に一回で見事合格し現在に至ります。
 「刑罰という人の人生を大きく左右することを決める重大な職責を担っていますので、本当に自分の選択が正しいのかということを常に考えています。休みはあまりなく、家に帰れないことも多いですが、大変な捜査や公判を遂げて、適正な判決をもらえたときにはやりがいを感じます。」と真摯に語る彼は、間違いなくあの厄介な中学生と同一人物なのです。もしかしたら矛盾点に着目する癖が今に役立っているのでは、と考えるのは短絡的に過ぎるでしょうか?
 「また僕の法廷写真がニュースに出ました!」と報告して来るお茶目なところもあるスーパーエリートは、生徒の特異性を封じ込めてはならないと、私に気づかせてくれました。
(担当 門脇)

学園ニュース








境港校舎にマルチな才能,永見先生登場!

 二年間境港校舎の英語科を担当してくださった美柑先生が、昨年度を最後に、若葉を退職されました。代わりに今年度からは、三学年分の英語を永見先生に担当していただくことになりました。
 永見先生は、三十年以上も英語を指導されているということもあり、授業は納得の安心感。生徒から聞くと、授業中ではユーモアな一面もあるそうです。また、英語だけでなく数学や理科など複数科目を指導できる点も他の教員にない強みがあり、私自身とても頼りにしています。
 昨年の三年生は、全員が第一希望に合格することができました。今年も永見先生と一緒に生徒たちを合格させられるよう尽力していきたいと思っています。
(担当 古徳)

職員随想 








もくもくキャンプ場にて
    佐布 明道


 他には誰もいない。日の光がほどほどに差し込むように間伐された森の中で、美しい緑をただ眺めている。山鳥が枝から枝へと跨ぐ。落とされた毛虫が地を這う。羽虫は耳障りだが、鶯の鳴き声は心地いい。
 小学生の頃を思い出した。母は走っているか歩いているかわからない人だったと、国体選手だった父が言っていた。そして小学生の僕は運動音痴だった。年2回の運動会、最初の競技の百メートル走では1位から3位までの子の胸に順位のシールがつけられる。それは足の速い人の称号みたいなもので、その日は一日中胸に輝いているのだ。毎年「もしかしたら」という気持ちでスタートに並んだ。背の順だったか、なんとなく同じタイムの人と走らされたのか覚えはない。しかし期待通りにはいかなかった。昼食の時に母を悲しませただろうか。「遺伝だからごめんね」なんて思わせなかっただろうか。
 あれから40年近く過ぎた。こんな時代だから、そういったご褒美は廃止されているだろう。僕みたいな運動音痴など気にしないでいいから、こんなときは足の速い人を褒めてあげればいいのに。
 今でもスポーツには抵抗がある。もちろん何かをやっている人をうらやましく思うし、過去の活躍の話を聞けばワクワクする。観戦も嫌いじゃない。それでもやってみないかと問われれば、断り方を考えてしまう。瞬発力って鍛えられるものだろうか。二倍練習すれば追いつけるって本当だろうか、それは信じていたい。個人差はあるにしても。とにかく体を動かすことをずっと避けて生活してきた。だから娘が「このアニメ面白いよ」と紹介してくれなかったら、キャンプをやってみようとは思わなかっただろう。
 道具は主人公が使っているものを揃えたかったが、あまりに高価なものは諦めて通販の口コミ数の多いものにした。運動音痴で不器用だから、やはり人の目が気になる。テントのたて方は何度もイメージトレーニングをした。でも結局向きを間違えたり、指を切ったりで、15分で終わる作業に1時間を費やした。腰も痛めた。初めてソロキャンプをした日の姿が誰かのユーチューブの動画に映り込んでいた。あの日も日南町「もくもくキャンプ場」だった。一昨年に購入した道具はほとんど新しいものに変わった。でも30センチ四方の安い焚火台には愛着がある。これにあわせて硬い薪はノコギリで20センチに切りわけ、鉈で細く割り、麻紐はナイフで解く。午後のこの作業が楽しい。カラスは割と早い時間に木の高いところに帰って来るようだ。夕方には昼間の風は大抵止む。太陽が沈むと森は怪しげな雰囲気になり、正直なところ不安になる。気分を出してファイヤースターターをこすって火花を散らし火をおこす。別にマッチでも良いのだけれど。調理は焚き火ではやらない。調理器具がススだらけになったら洗うのが面倒だし、近くではぜると服に穴が開くし、髪の毛は臭くなるし(とアニメの主人公が言っていたから)もっぱらガス器具を使う。コンビニの冷凍小籠包と冷凍海老餃子を蒸して食べるととても美味しい。カップに入ったキムチもサラダも、氷も飲み物も、コンビニが味方をしてくれる。「アウトドア」なんていうと登山家に笑われてしまうだろうが、こんなことを楽しめるようになった自分が嬉しい。
 西の空の金星が合図となり、星取県の真価である星々が夜空いっぱいに広がるのは三回に一度くらい、澄んだ夜にだけ。

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