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新! 学校報「泉」 アーカイブ

若葉学習会学校報「泉」 第653号 (2021年11月号) 猫を葬る少年のこと  佐布 明道

今月の短歌


文化祭僕らのきずな段違い
マスクごしでも届けるこの声

倉吉校舎 中学3年 野口 遥生



君たち僕たち① 
米子校舎 小学5年 
     瀬恒 慶乃さん 

 授業が終わり片付けをしていると、「先生、さようならー」の声とともに数名の生徒が電気を消して行ってしまう(まだ私が教室にいるのに!)ことが常となっています。そんな時に、その数名と行動はともにしつつも、必ずもう一度電気をつけてくれるのが慶乃さんです。いつもありがとう!とても助かっています。
 若葉の感想を聞くと、「他の学校の友だちができて楽しい」と言ってくれました。確かにいつも友人に囲まれて楽しそうです。休憩時間になると友人と一緒になってホワイトボードへの落書きが始まるのですが、漫画家志望の彼女が描くのは決まって「しずくちゃん」なるオリジナルキャラ。ちなみに、家でも紙と筆記具とお許しさえあれば延々と絵を描いていられるそう。5月ごろまではとても静かなクラスだったのですが、今やそんな頃があったとは信じられないほど、明るくにぎやかで元気いっぱいのクラスです。
 そんな環境の中で彼女は成績も常に上位をキープ。絵を画くだけでなく、もちろん勉強も頑張っていますよ!
(担当 福本)

君たち 僕たち② 
米子校舎 高校1年
     濱田 翔さん

 「若葉には高校から入りました。知らない人ばかりでしたが、すぐに輪の中にいれてくれる暖かさがありました。」という濱田君。その言葉からもわかるように、高1ハイレベルクラスは仲の良さが抜群です。わからない問題を教えあっている光景を、ほほえましく見ています。
 中学まではサッカーに全力で取り組んできましたが、生命科学科に入学したこともあり、高校生になってからは勉強にあてる時間が増えました。知識が増えていくことに喜びを感じることが多いようで、授業で高度な内容を扱ったときには、特に嬉しそうな表情をみせてくれます。話をよく聞いてくれることが伝わってくるから、教えているこちらも安心感があります。
 将来やりたいことは、まだ具体的に決まっているわけではないようですが、どんな方向に進んだとしても、誰かの役に立ちたいという気持は強く持っているそうです。
 彼が授業に臨む積極的な姿勢が、クラスの雰囲気を一層よくしてくれています。僕はいつも助けられていますね。
(担当 小西)


卒業生はいま 

大阪大学文学部
西洋史学専攻
          佃 海翔 さん    
 

  倉吉校舎に中学の3年間通学していた彼に取材をお願いしました。当時、校舎にやって来ると一声「今日は川に飛び込みに行ってきました」と、腹筋が6つに割れたワイルドな彼でしたが、学ぶこと知ることへの純粋な好奇心も旺盛だったことをよく覚えています。理路整然とした口調は昔と変わらず、話の節々から、新しいことに挑戦していきたいという彼の高い志を感じることができました。
 大学での研究は充実しているようで、昔から好きだった歴史学を専攻しています。研究テーマの1つは「フェミニズム運動の歴史」です。近年よく耳にする「多様性の尊重」に関連した用語「ポリコレ」(偏見・差別を含まない中立的な表現や態度を用いること。5年前のドラマ「逃げ恥」でも取り扱われました)のことにも触れながら「現代が求める多様性の正体とは何なのか」歴史的な視点からアプローチをすることを試みています。「歴史を学ぶということ、それはクイズ王を競ったり、知識自慢をしたりするためにあるのではなく、現代の諸問題の根元にあるものを掘り起こすための教養、つまり問題解決の手段にしていきたい。難しい作業だと思いますが」やはり人文科学系の宿命というか、特に歴史的事象を現代の現象と結びつけ活用することは骨が折れる作業だと思いました。
 現在、彼が所属するゼミの教授は高校社会科目の教育改革にたずさわっている一人です。彼は研究職に就く予定はないようですが、これからの社会科教育にも注目しているそうです。
(担当 乗本)


学園ニュース(倉吉校舎)


倉吉の中学2年国語対策授業と中学3年土曜特訓の様子です。

 十月といえば、各中学校で中間テストが実施されましたね。倉吉校舎では対策授業を行いました。特にテストに出題されそうな重要単元を授業するスタイルです。今回は中二国語「用言の活用」の対策授業の様子です。その都度、生徒のニーズに応えた手作り授業が持ち味です。
 中学三年生のみなさんには定期テスト前に関係なく、九月から十二月まで「土曜特訓」と題して、毎週土曜のお昼に入試対策授業を展開しています。まだ早いのではないかなんて声も聞こえてきそうですが、「二学期が勝負どころ!」という校舎主任の熱い信念で、十五年以上続いている倉吉校舎の目玉行事でもあるのです。その伝統を引き継ぎ、今年の受験生も奮闘中です。      
(濱)


職員随想 




猫を葬る少年のこと
 佐布 明道



 家族がいない休日は暇だ。授業の準備をするのも良いが、することが何もないのも良い。でもしばらくすると何もすることがないことに飽きてしまい、雑多な部屋を片付けたり、DMの分別をしたりする。一通り済むと暇がまたやって来る。ごろ寝してユーチューブでも観よう。おばさんが一人でキャンプをする動画で笑い、おすすめの文房具を見ては「欲しい物リスト」に追加する。電車に乗って旅する計画を立てる。ラーメン店の店主のレシピを参考にして次はいりこのラーメンを作ろうと決める。そして子猫の成長を楽しみにしつついつか飼いたいと願う。そのうちに眠気にのまれて昼過ぎになると、もうご飯を食べることさえ面倒に思える。やっぱりこれはこれで「良い休み」だと思っている。
 いつの間にかのスクリーンセーバーをキャンセルしたら「パタゴニアを手放した理由」という動画のタイトルが出ていた。モンベル推しの理由は「コスパ最強」らしい。それなら大山まで行くしかない。
 我が家から裏へ向かってひたすら走ると桝水高原に辿り着く。山道に差し掛かる日下橋の手前の反対車線に何かが横たわっているのが見えた。最近道を横切る猫の動きが鈍い気がする。きっとこれもそうだろう。
 何かの番組で「猫が死んでいたらかわいそうだと思ってはいけない。かわいそうだと思ったら成仏できない猫がとり憑く。だから成仏するように叫ぶんだ」と言っていた。あれは誰の話だっただろうか。そして無意識に「成仏しろ!」と叫ぶようになった。いつものことだ。
 日下橋の信号が赤になり、何台かの後に止まった。それは小さな黒い子猫だった。カラッとした青空の下、乾燥したアスファルトを赤い血で濡らす子猫。市役所に連絡をすれば片付けていただけると聞いたことがある。大変なお仕事で申し訳ないと思いながら、かわいそうと思ってはいけないのだと自分に言い聞かせた。
 そのとき横断歩道を渡った少年に気づいた。そして早足で向かって来る。手にはバーベキューをするためのような黒の手袋、そしてスーパーでもらう大きなビニール袋。
 何をしようとしているか、すぐにわかった。近所の子だろうか。きっと箕蚊屋中学校の生徒だろう。魚を捌いたり肉を切ったりするのとは違う生々しさ、新鮮という言葉では絶対に表さないその物体を、誰もが見なかったことにしておきたいはずなのに。
 はたして、この少年は猫を轢いた車に乗っていたのだろうか。そうだとしたら通り過ぎた車が止まっているはずだがバックミラーには映っていない。まして少年が目の前の信号を渡ってくるはずもない。部活帰りに偶然見つけたのか。そうでなければ動物を葬る神様の使いか。
 信号は赤から青に変わろうとしていた。車の来ない時間はほんの少し。少年は迷いなく、やさしい両手で掬い上げた。
 青になった信号の車列に従い、ゆっくりと猫と彼の横を通り過ぎる。「ありがとう」と伝えたくて窓を開けたが間に合わなかった。ドアミラー越しの少年の姿はすぐに見えなくなった。そして「成仏しろ!」と叫んだ自分を強く恨んだ。
 秋の気配が遅い。赤トンボは見かけるが30度の熱波にマッチしない。それでも大山は少しだけ涼しい。枡水高原から博労座まで晴れぬ気持ちを解くために窓を開けた。帰り道はちがう道にした。
 ユーチューブで猫の動画を見るのはやめた。絶対に飼うことはできないから。

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