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若葉学習会専修学校報「泉」 学園長随想

若葉学習会専修学校報「泉」 学園長随想
 
 
 
若葉学習会専修学校報「泉」
     学園長随想(最新号)
 
 60年の歴史ある若葉学習会の学校報に、毎月学園長(前理事長)が寄稿している随想。
 最新号をお届けします。「泉」はもう600号を超えました。
 当時15歳だったみなさんは、いまおいくつになられているのでしょうか。
 
 
2019年3月号(621号) 恋を想う五月雨~青春時代の真ん中で~
2019年3月号(621号)
 
  恋を想ふ五月雨
 
    ~青春時代の真ん中で~ 
 
 
        学園長 吉野 恭治
 
 東洋大学が創立100年を記念して「百」に関する記念事業のひとつとして始めた「現代学生百人一首」は今年も成人の日に発表されると大きな反響を呼んでいる。わけても今年は「箱根駅伝」で3位となるなど、大学への注目度が高い年である。中学生から高校生を中心に、応募校は460校、57446首の応募があり、その中から「今年の100首」が選ばれた。若い人ばかりだから、若くないと詠めない視点も、感傷もあり、それが毎年とても楽しい。ことに青春時代、淡い初恋の感情の吐露が鮮やかに心地よい。私がいちばん心惹かれた歌は、新潟の高校2年の女学生の歌である。
 
月曜は19時半の越後線
1号車には君が居るから
        東京学館新潟高等学校2年 菅沼 麻沙
 
この歌のすばらしさは、越後線という北国のどこかひびきも寒い鉄道路線と、反転して「1号車には君がいる」
という暖かな車内の表現に感心するからだろう。そうした視点で味わうと、この歌もまた現代風に楽しい。
 
「生茶」より「綾鷹」がいいと言う
 君は私のどこがいいと思うの
           伊那西高等学校2年 小島  和
 
そうした青春時代をさまざまに詠ったものをいくつか列記してみる。なかでも中学2年の梅崎さんの歌は、すでに感性の上で成人しているようにも思える。
 
夕凪が風鈴さえも止めるのに
 時間はとまらぬぼくらの青春
         鹿嶋市立平井中学校2年 梅﨑 沙彩
 
数学を教えてもらうその代わり
 バッハのカノン君に聴かせる
          吉祥女子高等学校1年 森 はるか
 
冬の日にあなたと二人歩く夜
 手袋してない私に気付いて
        千葉県立小金高等学校3年 大山 桃生
 
「お前」って君はいっつも呼ぶけれど
 私の名前そんなに嫌い?
       秋田県立秋田西高等学校1年 岩谷 ゆい
 
 新聞紙進路のために目を通し
 君を見つけたお悔やみ欄に
      新潟県立長岡農業高等学校3年 秋山 柚紗
 
「あ、おはよう!」あなたは毎朝言ってたね
 今日も聞こえるよ雲の上から
     東京学芸大学附属高等学校 1年 正林 環奈
 
こうした歌の題材の区分のなかでも、この世代ならではというものは、「学校生活」だろう。学芸大附属の佐藤
君の歌は感情がこぼれるほどに秀逸で、降り注ぐ緑の中を走り抜ける躍動がたまらない。
 
新緑の木々の間を抜けてゆく
 覚えたばかりの校歌とともに
      東京学芸大学附属高等学校1年 佐藤  航
 
 もう一首、沢邑さんの歌、夏の部活であふれる汗、その汗が前髪を伝わって、ちょうどバーコードのように見えるという歌はうまい。我々世代では発想できない。
 
滝の汗前髪ぬれてバーコード
 部活女子の夏の天敵
        東京都立片倉高等学校1年 沢邑 仁菜
 
 ほかにもいくつかの秀逸な「学校生活」の歌を味わっていただきたい。
 
日本史の教科書載ってるあの人も
 ゲームの中では私の恋人
       埼玉県立越谷西高等学校3年 小太刀玲奈
 
帯をしめ天井あおぎひと呼吸
 一本の声ぼくの初勝利
           国士舘高等学校2年 亀山 頼孟
 
アルバイト笑顔で貯めた諭吉様
 一人二人と旅立つのですね
        静岡県立下田高等学校2年 藤沢 未羽
 
友達に気分を合わせ猫かぶる
 「自分」を演じ今日も過ぎてく
        東京都立大森高等学校3年 坂本 尚斗
 
目の前に私がいるのにケータイに
 夢中になって透明人間
       東京都立美原高等学校1年 内田 佳恵
 
若い時代はなにより「家族」のぬくもりも歌の対象となる。みずみずしい感性で詠う今どきの「家族」、そこに歌われた蝉しぐれも、ハルジオンも新鮮で優しく響いている。
 
蝉しぐれお墓の前でこだまする
 聞こえてますかひいおじいちゃん
       千葉県立千葉西高等学校1年 佐々木 萌
 
ハルジオン祖母の教えた花の名を
 ふと思い出す日向の病室
        専修大学附属高等学校1年 冨岡 千夏
 
簡単なアイライナーの引き方を
 八十一の祖母に教える
             秋田大学4年 加藤 菜々
 
「地元出る。」決意を伝えたその時の
 涙溢れた母の表情
      山形県立酒田光陵高等学校3年 佐藤 優花
 
上京後一人暮らしでする料理
 決まっていつも母の献立
              東洋大学1年 阿部健太朗
 
携帯を見つめてばかりの若者よ
 私の祖母に席をゆずって
        武蔵野市立第四中学校2年 髙田 乃瑛
 
 100首の歌にはさまざまに力作が多いが、社会風景や季節の風物を巧みに詠みこんだものも多い。
 
無くそうと言えば言うほど隠れてく
 心にキズを負った人々
       埼玉県立坂戸西高等学校2年 日野萌々香
 
梅雨の日の薄暗い道のそこだけに
 光があたったような紫陽花
            十文字中学校2年 能見 倖凪
 
「平成」とならずに混乱三十年
 次の時代こそ「平成」なるか
            成城中学校1年 福宮 友樹
 
二歳の子助けてくれたヒーローは
 優しいこころの七十八歳
        武蔵野市立第四中学校2年 根岸 颯汰
 
 いじめのケースや行方不明の幼児など社会問題も巧みに織り込まれている。私がこの32回目で最も好きだった歌は
 
教室で百人一首を学びつつ
 まだ見ぬ恋を想ふ五月雨
          四天王寺高等学校2年 岡田 直子
 
「想う」でなく「想ふ」であることだ。ひらがな一字で歌は生きもするが死にもする。岡田さん、いい歌ありがとう。
 
 
             
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